さてもう一つ大事なことに絵画を描く効用に脳の活性化を挙げることができます。爾来絵を描く
こと、書をすること、随筆でも小説でもものを書くこと、論説を語ること、こういうことをやっている
人はいつもその年齢を感じさせません。長生きする人もいる。ぼけている人は少ないのです。
モチロンこれらをやりながら、飲酒喫煙をなす人達はこの限りではありません。絵を描くこと、
ものを書き、しゃべること、これをするにはいつも下調べ、観察考察、構成の思考と絶えず脳細
胞を動かしているのであります。以前は人の脳は生まれたときにその数は決まっていて、それ
を若いときに教育訓練することにより質の向上があり、年とともにその数は減少するといわれ
ていました。ところがそれは違うと言われてきて、体の筋肉でも動きを止めてしまえば、たちまち
衰退が始まる。これは生理学の原理であることは判っていました。脳も確かに年齢とともに萎縮
は進みますが、脳細胞とそれをつないで構成するニューロンは活動することによって絶えず進
化しているのだと最近言われだしました。
定年にいたって何もしなくなった人の1ヵ月後の顔の、特に顎のしわと筋肉の張り具合を見てみ
るがいいでしょう。私の今言っていることに納得するはずであります。人は決して年と云ってその
歩みを止めてはいけないのです。することがないなら探す努力をすること、これも若く身体を保つ
秘訣かもしれません。趣味を持つこと、それがぼけ防止の最大の効用であることを強調しておき
ます。 |